男と女 Un Homme et Une Femme No3「浮気主人(彼氏)を手のひらに乗せる:恋愛の精神病理学的考察」

「頭から湯気が出る」と昔からよく言われるが、実際、よし子さんB(仮名)の場合湯気が立っているように思えた。友人から聞いたとのことで,当院へお見えいただいた。
「旦那が浮気しているのがわかって腹が立って仕方がない、いらいらして仕方がない、何とかしてほしい、別れようかとも考えている」ということであった。ちょっとこれは人生相談に近いからお話を聞きながら、どうしようか考えていた。まあ、あまりの興奮があるので、いつもの「まあ、ちょっと頭冷やしに通ってみる~~~~」と、話を聞いてみることにした。ゆっくりと話を聞いてみると、「どうも別れるつもりはないらしい」。長年連れ添ったお二人を、何とか元に戻す方法はないか?
そこで、「ご主人を手のひらで、泳がして、見る気ない???」と聞いてみた。「エッ、そんな方法ある?」と半信半疑。とにかく「一度試してみる、それでだめやったら、別れたらええないの?」との私の提案に乗ってきた。
それはね、それはね「ゴニョゴニョゴニョ・・・#$%&‘()“#$  (企業秘密)  %&*+‘‘‘>????ゴニョゴニョゴニョ・・・」噛んで聞かせるように説明して、一度でいいから1週間試してごらん。しぶしぶ、半信半疑彼女は「試してみるわ!」とのことであった。
1週間後、不敵な笑顔で・・やってきた彼女、「先生!びっくりしたわ!うまいこといったわ!フフフフフ・・・(少し女の怖さを私は感じた)私、久しぶりに、迫られテン、ホンマ久しぶり・・・腹たってたから、拒んだろう、思ったけど、ヨウ拒まんかったは!」ちょっと、私が赤面するような内容。この後もね「どこか食べにいこ~よく外食に誘われるようになった」とのこと、この後ご主人の自慢話、違う方向で「湯気が出てますよ!」。「うまいこといったね~~~、旦那もう手のひらで泳いでるね・・・孫悟空と一緒、お釈迦さん(よし子)さんの手の中で泳いでるね、面白いやろ、別れんでよかったね・・・・」とよし子Bさんと二人で、旦那の行動をほほえましく、ほくそえみながらお聞きしている。何ともコケットな感じのかわゆい方である。
同様の方法で、夫婦の「離婚の危機」を解消したカップルがおられる、「帰るコールを毎日入れるようになったご主人:帰るコール亭主」「毎日定時に帰るようになったご主人:伝書鳩亭主」・・・・・・かなりおられる。
私は「世の中の、浮気ご主人方の敵」かな~、フフフまあいいか!仲良い夫婦続いてくれれば「意識障害」をさめさせずに「恋愛妄想」を続けるのもよいことか??意識障害も妄想も治す必要はないです!という結論。
たまには、精神病理学などと、わけのわからない学問も、世の中のお役に立てうるということです。

元気でね!お二人仲良くね!よし子さんB(仮名)旦那さん、君の掌の中でゴソゴソしても大丈夫、御釈迦さんの手の中の孫悟空みたいヤネ。
当然、この話はご本人の了解をいただいた上で、ご本人とわからない程度に変更してある。

逆説志向No3:書痙の精神療法(人前で字を書こうとすると震えてしまう)

書痙(しょけい):人前で字を書こうとすると震えてしまうような症状は、「逆説志向:ギャクセツ シコウ」にうってつけの症状である。

書痙の患者さんは比較的多く当院にお見えになるが多くは数回の逆説志向のセッションを行うと治ってしまう。

簡単、例のごとくに図を書いて患者さんに考えてもらう。

症状:書痙 字を書こうとすると震える ←  ←  ←  ←  ← ← ←

格好が悪い、変な風に見られる

人に見せたくない

隠そうとする、止めようとする
↓ 
また、症状が出るのではないか。(期待不安):不安の増強                                   ↑

⇒  ⇒  ⇒  ⇒  ⇒  ⇒  ⇒  ⇒

(期待不安がキーワード)

そして、やおら鉛筆と紙を取り出して、意識して一生懸命震えながら、住所や名前を書いてもらう。多くの人は最初の数行は震えるが、2~3行も字を書いているとむしろ震えられない自分を見出す。ついでにカルテを見せて、私の字を見せる私の字のほうがきたない。私は悪筆で有名なのである。ある患者さんカルテを見て「ドイツ語かと思いました」だって、私は、カルテは患者さんにも見てもらってもよいように日本語で書く主義である。

このような逆説志向のセッション、数回1~2週間に1度する。その間に人前で出来るだけ、震えるつもりで字を書く練習をしてきてもらう。多くの患者さんは数回で楽になるという。?薬物療法も多くは緊張がひどいときのみといった処方で済む。

多くの人が数年にわたり困っているという。この治療法は私が好んで利用する、心療科で、これほど劇的な効果がみられるものも少ないからである。

ある患者さんは、あまりに劇的な改善を見て、泣かれてしまった「格好が悪いといって数年にわたって家にこもって出れなかった」。数回セッションで手の震えが止まり「いったい私のこの数年はなんだったんだろう」と泣かれてしまったときには、私もうれしかったがびっくりした。

私は女性に泣かれるのは弱いのである。

ご本人の了解をいただいたうえ、ご本人と同定できない程度に改変してあります。

文献

1)精神医学大辞典(講談社)

2)V.E.フランクル:高瀬博、長瀬順治訳「現代人の病」-心理療法と実存哲学-(丸善)