強迫性障害とフェイルセーフ

機械工学の設計思想のひとつに、フェイルセーフというものがある。
「フェイルセーフとは、なんらかの装置、システムにおいて、誤操作、誤動作による障害が発生した場合、常に安全側に制御すること。
またはそうなるような設計手法で信頼性設計のひとつ」。
これは装置やシステムは必ず故障する、あるいはユーザは必ず誤操作をするということを前提にしたものである。機械は壊れたときに自然にあるいは必然的に安全側となることが望ましいが、そうならない場合は意識的な設計が必要である。たとえば自動車はエンジンが故障した場合、エンジンの回転を制御できないような故障ではなく、回転が停止するような故障であれば車自体が止まることになり安全である。鉄道車両は、(空気圧で動作する)ブレーキに故障があった場合、非常ブレーキがかかるように設計することがフェイルセーフとなる。(フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)
一方で、強迫性症状とは、「ばかばかしいとはわかっていながらも、考えてしまうこと、あるいは行ってしまう行為」、例えば「玄関の鍵をかけたはずであるのに、かけたかどうか気になって仕方がない、ガス栓は閉めたかどうか、電気のスイッチを切ったかどうか・・・・・」気になって仕方がない。  何回も何回も確認しなければ気になって仕方がない。よくある話である。皆様方もご経験があるであろう。私も多々気にかかるほうである。だからこんな時には、誰かに確認してもらうことにしている。このような、症状は、人間の心の調子あるいは身体的調子が悪くなると強迫症状が出てきやすくなる。
ここで、先ほどのフェイルセーフを人間の場合に当てはめてみると、人間を機械にたとえるのはどうかと思うが、人間は非常によくできている「心の調子が、あるいは身体的調子が悪い」と強迫症状はよく出てくる。つまり人間にはこのようなフェイルセーフの設計思想が、DNA上に組み込まれているのである。強迫症状があるご本人はつらいことが多いがこれはフェイルセーフなのである。
治療として、私は、薬物療法この症状をある程度で軽減した上で、もう一方で精神療法的には、褒めることにしている、「あなたはそれだけきっちりした、几帳面な人なのですよ、安全装置がはたらいている人なのですよ!!」多くの方に、「気になるくらいであれば、大いに確認をおやりなさい、次第に自信がついて苦しさが軽減して行きますから」と説明する。多くの患者さんは、はじめは信じてくれないが、何回もしているうちに確かに!!と思ってくれるようである。多くの方が少しほっとしてくれる。