よし子さんはプロのヴァイオリニストである。私はその方に疎いのであるが、有名な方らしい。そんな人がある日、突然、人前でヴァイオリンを奏でようとした途端、手が震えて弦が震えるようになってしまった。何とか無理に抑えようとすればするほど、手の震えはひどくなり、当然弦は震え美しい音が出ない。困り果てて当院にお見えになった。
?
症状を訊けば訊くほど、いつもの「逆説志向」の適応のある方である。
?
?
そこで、いつものごとく診察室で演奏の練習、初日は楽器を持参されなかったので、とにかく、弦に似た長い棒を引く練習をしてもらった。
?
やっぱり!! 震えないね~~~!
?
ご本人述「アッレ~ おかしいですね~、震えませんね~」心配ならば服用する程度のお薬を処方した。
?
宿題として「震える演奏」を練習してくることにして、次回は実際の楽器を持参して当院で「震える演奏」をして頂くことにした。
?
1週間後実際の生演奏、すごいね~ 素晴らしいね~ 音痴の私が感心した、たったこんな小さな楽器なのに、こんなに大きな音で、なんて深いコクのある音なんだろう、と感動している私をよそに、彼女の手は全く震えず治療は完了した。
?
お薬は使用しなかったとのことであった。困れば来院して頂くことで当院を卒業いただいた。
?
?
プロの渾身の生演奏を聞かせていただいた。生演奏は一回で終了、治療も終了、もう、一回くらい聞かせてほしいな~と思うのであります。
?
?
たまには役得というものであります。いいなあ~ヴァイオリン