「仮面うつ病」:さまよえるドクターショッピング

うつ病について、比較的一般の方もご存知の言葉に「仮面うつ病」があります。うつ病の人は表情が出なくなるので「仮面」のようになるので「仮面うつ病」だとか、誤解されている方が多いように見受けます。

 「仮面うつ病」とは英語の「masked(仮面された) depression(うつ病)」の直訳です。本来の意味はカナダのクレイルという人が言い始めた言葉で、例えば先の述べた、胃腸症状、「頭痛」「めまい」「心臓がドキドキ」「呼吸が荒くなる」といったなどのいわゆる「自律神経失調症」と呼ばれるような種々の身体症状が目立ってしまい、「抑うつ症状」、「やる気が出ない」、「うっとうしい」「悲しい」などのこころの症状が前面に出てこない、つまり身体症状にmasked:仮面された、あるいは隠されたといえばよいのでしょうか、そのような身体症状の奥に「マスクされたうつ病」の症状がみられるうつ病のことを「仮面うつ病」と呼びます。

 この方たちは不幸にもこの身体症状のために、たくさんの病院を訪れては、体の検査をいっぱい受けて廻っては問題ないといわれ、いわゆる「ドクターショッピング」を行い、さまよったあげく最後にメンタルな面を指摘されわれわれのもとにこられます。

 ただし、逆にこれは気をつけないと、うつ病のように思われていた症状が、実は身体に関する病気がもとであったということがありますので注意が必要です。