飲酒後うつ病:ポストドリンキングデプレッシオン:二日酔い

「やあ、久しぶり」何年か前に 当院を卒業した患者さんである。当時は定型的なうつ病でうつ病の薬にもよく反応、経過を見ながら治療終了、卒業した方であった。

どうも最近気分がすぐれない、元気が出ない、夜もしっかり眠れない、寝付くことは寝付くが眠りが浅い、その分日中も元気が出ない。

困ったな。うつ病性障害うつ病の人は、一生に一回のうつ病の気分の波のみで済む人が多いが、中には反復する人たちがいる。今回はもう少し時間がかかるかな、再発の方は一般に初発の場合より時間がかかる。

この人もそうかな?と思いながらも、初心に帰って病気の経過を、確認、聞きなおす。

よ~く、聞けばこの人毎晩多量のお酒を飲む。ビール数リットル、缶酎ハイ数本。チャンと聞き直してよかった。この人には3日でいいから禁酒をお願いした。それでまだ症状が続くようならうつ病の薬にしましょうと提案した。この人も怪訝な顔で何故薬を出さないか?と聞く。

うまくいけば薬なしで

一日目そんなに変わらないですよ。

二日目チョット体の軽さ感じますよ、その晩くらいからよく寝れますよ。

三日目治りますよ。それでダメならうつ病の以前に効果があったうつ病の薬出しましょう、と約束した。

お薬を出さなかったためか、なんとなく不満そうにその日は帰って言った。

予約の1週間後、診察室に入ってくるなり「治った」とのこと。

私思わず、お互いに大声で笑ってしまった。

後は、お酒を呑んだら、数日はある程度はしんどいことを説明し、今回はこれで治療終了した。

昔、酒飲みの医者仲間で、二日酔いを「ポストドリンキング デプレッシオン:飲酒後うつ病」などと勝手に命名していた。酒飲みの医者だからわかる「うつ病」の1亜型。

人生には二日酔いをしてみる経験も必要だ。